藻岩窯 〜藻岩の自然に囲まれて、地元の土で作陶する陶芸家

 藻岩の地に深く根を下ろした陶芸家がいる。北ノ沢に窯を構える葉原裕久さんだ。葉原さんは北ノ沢の原土を水簸(すいひ ※原土を水に溶かして余分な石や砂などの不純物を取り除き粘土を精製する方法)し、粘土を作り、札幌近郊の草木灰や土などを調合したものを釉薬(ゆうやく※うわぐすり)として使用している。

 陶芸の道に入ったきっかけは、先代の陶芸家・谷内丞氏の土作りを手伝ったことから始まった。初めは粘土が作れることに驚いたと言う。岩石が長い年月をかけて徐々に風化してできた粘土を手にしていることに不思議な感覚を覚え、焼き物に対する興味がさらに深まり、2011年に藻岩窯の後継者となった。

 粘土を作る工程は、細かく砕いた原土を水甕に入れて2週間ほど寝かし、水分が十分に浸透してから撹拌し、フルイに通すといった作業(水簸)を年に3回行う。原土はとても重く、1回の水簸に約1カ月半ほど費やすそうだ。そうしてできた粘土は、貯蔵甕で約半年から1年ほど寝かし、ようやく使える状態になるのだと言う。毎年雪解けから始めて11月頃まで続く作業だ。札幌ではおそらく粘土から作って作陶しているのは葉原氏だけではないだろうか。

 釉薬(うわぐすり)の原料には植物の灰や札幌近郊の土石類を使用する。「1つの釉薬を使いこなすには最低でも1年以上かかる」と先代から言われていたが、ここの粘土と釉薬の相性に至っては10年以上かかったものもあるそうだ。


 陶芸は1つの釉薬でも使用する窯によって、まったく違った表情を見せるそうだ。また、焼く温度や詰め方によっても変わってくる。最後は炎に全てを委ねることで、どうなるかわからない面白さがあるのだという。

 「できることなら200歳くらいまで生きて、陶芸のあらゆる可能性を試したい」と笑っていた。そして現在は薪窯を手作りで製作中とのこと、パワフルである。


(文・写真:大本恵子 もいわ塾1期生 2024.10.30)

■所在地:北ノ沢 1744-27

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■HP:https://sakurayamayudo.web.fc2.com

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