中丿沢にあるドローン教習所「札幌ドローンスクール」を主宰する山本由紀夫さん

ドローンの講習

 じょうてつバス「真駒内駅~中ノ沢」線のバス終点の停留所から、300mほど道なりに山に向かうと、左側になだらかな丘陵の印藤牧場跡地の牧草地が開けてくる。その中腹の平地に「札幌ドローンスクール」の旗が見える。ここはドローンの練習場だ。牧場は廃業しており牛はいないが、広大な空間が広がっている。その一角、テニスコートより少し大きい32mx28mの区画に練習経路が地面にテープピングされて、要所要所に三角コーンが置かれている。細かいドローンの操作を練習するためのものだ。その近くのテント内、机上のノートパソコンを前に、ドローンスクール代表の山本由紀夫さんが関係者と談笑していた。

 

 山本さんはドローンを使った映像制作を行っていて、TBS世界遺産「知床特集」(2021年1月10日放送)、NETFLIX Nシリーズ「未来日記」(現在公開配信中)、北海道の美しい映像、藻岩町内会連合会のHPの空撮等を手掛けた。月の半分は出張で、多忙を極めている。

 

 山本さんは、余市高校を卒業し、札幌の経専学園放送芸術科で1年勉強。その後、音響技師として放送局関係の仕事に10年弱従事。メディア関係の仕事を手掛ける前の約10年は、映像を含むFM放送関係の仕事に従事した。 かつて、札幌市の事業で防災情報の発信に関わり、そのときに会得した動画制作、Web配信の技術が、現在のドローン映像関係の仕事に活かされ、今に到っているという。

 

 山本さんのドローン技術の習得はほぼ独学だった。昨今、ドローンに対する需要が高まっているが、それを教える場所があまりないことを考えて、2022年6月、牧場跡地を借り受けてスクールを開校した。牧場だった場所を利用していることもあり、練習空域が広いのがいちばんの特徴だという。

 ドローンの操縦は、2022年末に新たな国家ライセンス制度が始まり、2025年度に新制度が完全移行する予定だが、過渡期の初年度が今年(2023年)だ。

ドローンの練習コース

 現在、日本で飛んでいるドローンの多くが中国製で、世界のドローン市場も中国製ドローンが席巻している。西側諸国は情報セキュリティーの面から中国製ドローンの使用を控える動きが出ており、日本もその方針だ。日本では国産ドローンを開発中だが、技術的には全く中国のものに追いついていないのが現状だという。これからは、日本の国家ライセンスで機体認証されたものしか飛行ができなくなる予定なのだが、まだ機体認証を受けた国産ドローンがほとんどなく、業界の悩みの種になっているそうだ。

 

 最後に、山本さんがドローンの簡単なデモストレーションを示してくれた。かなりの強い風の下でも安定に飛行できることを確認し、初心者の私に手際よく操作方法を教えてくれた。飛ばすことの手軽さが体感できたが、それが多くのドローンの落下事故を招くことも想像できた。より安心安全なドローン飛行の実現を目指す、中ノ沢の札幌ドローンスクールの存在意義は大きい。このドローンスクールには、新たなドローンビジネスの事業化に貢献する夢がある。

※ドローンに関する法令の記述は2024年2月現在のもの

(文・写真:本間利久 もいわ塾2期生)

 

  ▶ https://www.sapporo-drone-school.com (札幌ドローンスクール)